88の工程

種籾の催芽、種まき

米作り88の工程の12、13、14、17の詳細です。

浸種まで終わると、いよいよもうすぐ種まきです。

しかし、種を撒く前にもう1つだけ、工程があります。

種を発芽させる「催芽」という工程です。

今回は催芽から種まきまでの工程についてお話します。

<こんな方におすすめの記事です(初心者向け)>

  • 米作りの工程を知りたい
  • 初めての米作りでやり方がわからない
  • 催芽、種まきについて知りたい

種籾の芽出し作業「催芽」

催芽とは、種籾とは

「催芽」(さいが)・・・種籾を発芽させること
「種籾」(たねもみ)・・・お米の種

田んぼをやっていない人にとっては聞きなれない言葉ですよね。

「催芽」の読み方は「さいが」です。

ぬるいお湯につけて、種籾の発芽をさせることを言います。

これは稲の種籾だけに使われる言葉ではなく、野菜の種にも使われる言葉です。

ちなみに「種籾」の読み方は「たねもみ」です。

種にする籾のことです。簡単に言うと、お米の種です。

籾は稲穂を脱穀した状態のものを言います。

余談ですが、時々聞かれるのでお話しておきますとお米の種はお米です。

農家さんにとっては当たり前なのですが、普段「ごはん」としてしか見ていない人にとっては、「種」としての姿は見当もつきませんよね。

あ、白米は精米されてしまっているので種にはなりません。玄米はなれる可能性大です。

このへんは長くなってしまうので、また別でまとめたいと思います。
(子どもが簡単にできる、玄米を発芽させる実験)

催芽の目的

発芽のタイミングと成長速度を揃えるため

なんですが、これだとやったことがない人にとったらちょっと感覚的にわかりにくいですよね。

伝わるかは謎ですが、例えるなら

「修学旅行中の全校生徒を出発時間に遅れないよう、同じ時間に全員起こす」

みたいなイメージです笑

すごくのんびり発芽する子も、てきぱき発芽する子もいるので、とりあえず最初に全員発芽してもらえれば、その後の成長に大きな差が出ないということです。

そう考えると人間も種も似てますよね。

それぞれの個性は認めつつも、足並みをそろえるためにも集団行動の時はしっかり動いてもらうということです。

催芽の方法

僕の場合は法人で持っている「催芽機」という、催芽専用の機械があるので、それをお借りしておこないます。

この機械があるとお湯を一定温度に保ちながら、水を循環し、種籾に空気を送り込んでくれるのためとても便利です。

ただ、うっかり目を離すと芽が伸びすぎることがあるので要注意です。

催芽機のコントローラー

 

僕の場合は27℃程度のお湯で12〜18時間程で発芽させます。

浸水具合や、気温によってもまちまちなので、いちがいに「何時間」と決めないほうが、いきすぎることがないため安全です。

お湯の中の様子

催芽の機械なんて持ってないよ

という方もご安心ください。

「入浴した後のお風呂」で催芽は可能です。

機械を使わない種まきと合わせて、下で説明しています。

催芽の注意ポイント

ここで注意しなければいけないポイントが2つあります。

  • 発芽させすぎないようにする
  • 余熱で根が伸びやすいので考慮する
  • 濡れているだけで根が伸びるので考慮する

ここで、芽を出しすぎると(実際、最初に出てくるのは「根」ですが)、種まきの作業性が落ちてしまいます。

芽がさまざまな場所にひっかかりやすくなり、均一に種を撒くことが難しくなります。

そのため、芽が出すぎないけど、出てるという状況がベストになります。

難しいですよね。

よく、「鳩ムネ程度」と表現されます。

鳩のムネのようにぷっくり膨らんだイメージです。

ではどんな状態か。こんな感じの状態です。

催芽OK(若干行き過ぎてる気も・・笑)
時間が経つと伸びすぎてしまう籾も
この段階だと若干早い

ここをピンポイントでとらえるには、こまめな確認しかありません。

催芽中の最後のタイミングは外出禁止です。

催芽機はこんな機械

世の中にはこのような便利な機械が存在します。

農家さん向けだとこのようなものです。

個人レベルの小規模であればこのような機械も。

種まき

いよいよ種撒き。

「播種」(はしゅ)とも言います。

事前準備 種籾を乾かす

意外とおろそかにできないのがこの準備。

種まきをする前に、催芽させた種をよく乾かしてください。

発芽の進行を止めることと、乾いていたほうが種まきがしやすいためです。

種籾の乾燥

僕はこのように、麻袋に広げて1日乾かします。

種まき方法

播種機でおこなう場合、最低3人、4人いると楽にまわすことができるイメージです。

  1. 苗箱を投入する人
  2. 出口で受け取り重ねる人
  3. 種、床土、苗箱を補充する人
  4. 全体統括、フォークリフトオペレータ

播種機の流れはこのようになっています。
写真右側から苗箱を投入すると、左側へ向かって流れていきます。

播種機の外観
  1. 苗箱投入
  2. 床土が入る
  3. はけでならす
  4. 水がかけられる
  5. 種が落ちてくる
  6. 覆土をかぶせる
  7. はけでならす
  8. 出口

という流れで作業を行います。

やればやるほど、それぞれの持ち場が上達していくので、効率も上がっていきます。

出口の人が一番重いものを持つので腰にきます。

この場所で1日中はきついので、タイミングをみてローテーションしてあげないと、次の年は来てもらえなくなります。

播種機の各工程でどんなことをしているのかがわかるように動画にしています。


出口ではこのように作業しています。

ちょっとのひと工夫で田植えを楽に!「もみがらくんたん」

苗にもみがらくんたんを使うことこんないいことがありますよ。

  1. 苗の軽量化
  2. 根の張りの促進
  3. 稲から出る資材の循環

苗が成長し、田植え時期になるとこの苗箱はとても重くなります。

しかも田植え前は田んぼの水に浸けてあることでさらに重くなるため、少しでも軽くすることが大切になってきます。

大規模になるほど、扱う苗箱の数が増えるため、100gでも軽いほうが体の負担が少なくなります。

そこで僕は床土の下に「自家製もみがらくんたん」を敷くようにしています。

簡単に言うと、もみがらを炭にしたものです。

土の量を減らすことができるため、軽量化になるうえ、炭のため、微細な根の張りを促進する働きもあり、健康な苗にすることができます。

原料も稲からとれるものなので、まさに「循環」させることができます。

ただ、くんたんを焼く作業や、敷く作業は手間がかかるため、なかなか大規模農家さんほどやれる人は少ないのではないでしょうか。

もみがらくんたん
もみがらくんたんを焼く様子

種まきの注意ポイント

1箱にまく種籾の量を考える

僕の場合、約120〜140gの種籾を撒くようにしています。

農家さんによっては180g程度撒く方もいらっしゃいます。

自然栽培の農家さんだと100g程度でうすく撒き、茎が太い健全な苗をつくります。

当然、それぞれメリットデメリットがあります。

あつく(多く)撒くと、苗が密集するため田植え機で植えた時に欠株(植えることができなかった場所)がすくなりますが、その分苗は窮屈にそだてられるため細く育ちます。

うすく(少なく)撒くと、その逆に、欠株は多くなる可能性はありますが、苗はのびのびと太く育てることができます。

ここから先はいろいろな考え方があります。

気候や条件によっても異なりますが、欠株無くびっしり植えたほうが収量が上がると考えいている方もいれば、多少欠株があったくらいのほうが、風通しも良く、よく育ち、収量も増えると考える方もいます。

僕はどちらかと言うと、後者寄りの考えで育てています。

やっぱり子どもの頃からのびのびと育って欲しいので。

ただ、田植え後は草が生えるのがこわいので、欠株箇所の補植はします。

どうしても稲がない場所は草が出やすいので。

手植え前提であれば、100g程度まけば十分だと思います。

自給程度だから機械は使わないよというパターンの方におすすめの方法

今までは面積を多くこなす農家寄りの話でしたが、これを読んでいただいている方には

  • 自給程度の小さな田んぼをやりたい
  • 機械を持っていない
  • 趣味なので気楽にお金をかけずにやりたい

という方もいらっしゃるかと思います。が、ご安心ください。

催芽、播種はもちろんお金をかけずに手でできます。

機械は本来手でおこなってきたことを便利に、楽にしているだけの道具です。

催芽

これは家のお風呂の残り湯を使ってできます。

家族全員がお風呂に入った後、そのお湯に浸けておくだけです。

気温や水温にもよりますが、早ければ次の日には芽(根)が出るかもしれません。

播種

苗箱を用意し、手で、床土と種と覆土をすればOKです。

あらかじめ重さを測り、おわん一杯分を均等にまく。

このように決めておけば、苗箱ごとのバラツキがなくなるためおすすめです。

では実際にどれくらいの密度でまいたらいいの?

という疑問が浮かぶと思います。

目安がこちらです。これは田植え機用として、かなりあつめ(多め)に撒いている様子なので、手植えであればこれより30%程度少なくし、太くて丈夫な苗に育てます。

種籾量の目安

 

手でまく場合も種が濡れていると撒きづらいため、乾かしておくことをおすすめいたします。

苗箱の他に「田んぼに直播して苗床を作る」という方法もあります。

これが一番昔ながらの方法です。

手間は増えますが、道具も少なく、一番強い苗に育てることができます。

機会があればまた書きたいと思います。

まとめ

催芽と播種についてお話させていただきました。

種の発芽は何度見ても感動するものです。

小さな種から芽を出し、根を張り、葉を広げ、いつしか穂をつける姿の感動は田んぼをやっている人でなければ味わうことのできない感動です。

ぜひこの感動を味わってみてくださいね!