ここでは「田植え」の工程についてお話します。
お米作り88の工程でいう38の工程になります。
これから田んぼを初める人や、田んぼをやったことがないという方でもわかりやすいように、できるだけ写真と動画を使って説明します。
ベテラン農家さんにとっては少し物足りない内容かもしれませんが、地域性や、やり方の違いなどを感じていただけたらうれしいです。
こんな人におすすめの記事です。
- 田植えについて知りたい
- 農家はどうやって田植えをしているかを知りたい
- 田植えの写真、動画を見てみたい
Contents
田植えの時期
5月から6月に田植えをする地域がほとんどです。
沖縄など暖かく、1年に2度栽培する地域は2月から田植えをすることもあります。
僕がいる千葉県では早い人だと4/20頃から始め、ピークはゴールデンウィークになります。この時期になると、普段見かけない人が田植え機に乗って、農家の実家の田植えを手伝っている様子がよく見られます。
5月の第2週目くらいで終える方がほとんどです。
この田植えをする時期は一概に自分だけ決められるわけではありません。
田んぼに入れる「用水」の都合上、周りの農家さんとある程度時期を合わせる必要性があります。
6/20頃には「中干し」という工程に入ってしまうため、用水を組み上げるポンプを止めてしまうため、田んぼに水が入れられなくなります。この時期までに稲をしっかりと分けつさせ、成長の軌道に乗らせるには5月2週目まであたりが限度ということになります。
用水の都合は地域によってさまざまあると思います。
田植えの準備
田植えをする前に、することは2つあります。
- 苗を必要な数だけ運んでおく(苗運び)
- 田んぼの水を抜いておく
10aあたり、約18枚の苗が必要です。
僕は普通の農家さんより少なく植えるため、約14枚程度になります。
田んぼの大きさに合わせて必要な枚数を育苗ハウスから持ち出して、田んぼ運び、水につけておきます。
濡れた状態のため苗箱は1枚約4kg程度になります。「苗運び」はこれを1枚ずつ運び出すチカラ仕事になります。
あまり長時間置いておくと、サギにかじられる危険があるため、できるだけ直前に運びます。
また、次の日に植えられる田んぼの枚数を想定して、事前に水を抜いておきます。
田植えの方法
ここでは田植え機を使った田植えについてお話いたします。
株間
株と株の間の距離を「株間」(かぶま)といいます。
株間が大きいと単位面積あたりの苗の数が少なくなります。
昔、手で植えていた頃は「尺角植え」と言って、30cm角で植えることが多かったようです。
現在では機械化が進んだこともあり、多い人は18cm程度で植えます。
僕はできれば30cmで植えたいのですが、田植え機の設定がそこまでできないため約27cmで植えています。
条間
苗同士の横の間隔を条間(じょうかん)といいます。
これは機械の爪の間隔で決まってしまうため、ほとんどが30cmである場合が多いです。
田植え機のまわり方
田植えは耕耘や代掻きとちがって、一度植えた場所を通ることができません。回り方を考えないとせっかく植えた苗を踏んづけてしまうことになります。
これも農家さんによって、回り方はいろいろありますが、僕がやっている例はこのようになります。
(図作成中)
田植え機が旋回する場所を枕地(まくらじ)と言います。
この枕地は2回に分けて植える方法です。
1回ですませる農家が多いようにも感じていますが、師匠に教わった最初の周り方がこちらだったため、くせになっています。
周り方の一例として動画をご覧ください。
写真と動画でわかる農家の田植え
これが田植え機です。
この田植え機は6列をいっぺんに植えていきます。
(田植え動画追加予定)
田植え機の仕組み
(写真、動画追加予定)
注意ポイント
田植え時に注意するべきポイントを3つあげます。
- 水の量を適切にする
- できるだけまっすぐ植える
- 深いところに気をつける
では1つずつ解説していきますね。
水の量を適切にする
土が全面的に見えていて、十分な水分を含んでいる状態
田植えをする前日の夕方に、次の日に田植えをする田んぼの水をきっておきます。
もし、土が見えないほど水が張られたままの状態で田植えをするこのような問題が発生します。
- 苗が浮いてしまう
- マーカーが見えないためまっすぐ植えられない
- 船酔いする
水があると苗に浮力が発生してしまい、うまく土の中に植えて、置いてくることができません。
田植え機は植えながら、次に植える目印をつけていきます。
水が多いと、この目印がつきづらく、見えづらくなってしまうため、まっすぐ植えることが困難になります。
風が吹くと、小さなさざなみが水面でたちます。このさざなみの中、田植え機を走らせると、水面を走る船に乗っている間隔になります。
風向きによっては、実際よりも速く進んでいるように見えたり、ぜんぜん進んでいないようにも見えます。
このように自分が進んでいる速さや方向がわかりづらく、田んぼの凸凹によって揺れるため、船酔いの状態になってしまいます。
スケジュールの都合上、多少無理やり植えてしまう場面もありますが、あまりおすすめはしません。
一方で、水が少なすぎると今度は土が乾いてしまい、植えにくい状態になってしまいます。
土に含んでいる水分量も大切です。
要するに、土に水分が多く含まれていて、土が見えている状態が最適と言えます。
このようなことが起きないようにするためにも適切な水管理が必要になってきます。
田んぼの大きさにもよりますが、1反程度の大きさの田んぼであれば、朝一で植える田は前日の夕方に、夕方に植える田はその日の朝一に排水を始めるとちょうど良い水の量になります。
水の量が適切な例
水の量が少ない例
水の量が多い例
できるだけまっすぐ植える
写真のように田植えはできるだけまっすぐ植えてください。
え!?あたりまえじゃん?と思うかもしれませんが、これが実はかなり重要な要素になってきます。
理由はこの2つ。
- このあとの除草作業をしやすくする
- 植えた跡をここを通る地域の農家さん全員に見られる
除草作業をしやすくするためにまっすぐ植える
田植えをした直後から草との競争の始まりです。
通常の農家さんの場合、苗を植えたあと、1週間〜2週間程度の間に除草剤をまきます。
僕の場合は農薬を使わずに育てているため、除草作業が必要になります。
除草作業は、チェーン除草、動力付き除草機、手除草をおこないますが、どの除草も田んぼに入り、稲の列を歩いていくことになります。
この時にまっすぐであればあるほど、歩きやすく、効率がよくなります。
(除草については別途書きます)
地域の農家さんからの評価があるためまっすぐ植える
実はあまり知られていないこの要素は、新規就農者にとってはとても大切です。
田植えをされた田んぼは、そこを通りかかる農家さんのほとんどが実は見ています。
ぼくはよく、田んぼのことを「観客動員数ゼロの舞台」と表現しますが、作業をしている時は誰も見ていなくても、あとからあとから、観客は見ています。
そして、そのデキによって、「丁寧に仕事をしている」「雑に仕事をしている」という判断がなされています。
新規就農者にとって、地域の農家さんとの信頼関係はとても大切です。
そのため、田植えが極端に曲がっていたり、端っこまで植えられていなかったりしていると、「雑な仕事をする人だな」という印象をもたれてしまいます。
逆にここで丁寧な仕事をしていると、「あいつの仕事は丁寧だ」と1つの信頼を築くことができるのです。そのような小さな信頼の積み重ねがあれば何か困った時がある場合も助けてもらいやすくなります。
まさに田んぼは「観客動員数ゼロの舞台」です。
深いところに気をつける
深い場所に入ってしまうと、写真のように前にも後ろにも自力では動けなくなってしまうことがあります。
実は田んぼには「やりやすい田んぼ」、「やりにくい田んぼ」があるのはご存知でしょうか。
やりやすい田んぼ=広くて深いところがない田んぼ
やりにくい田んぼ=山間部にあるような小さな田んぼで深い場所が多い
深い場所というのは、機械を入れてしまうと泥沼状態になり出られなくなるような場所です。
そのような深い場所にトラクターや田植え機、コンバインをはめてしまうと大変です。
別のトラクターや時にはユンボを持ってきて引き上げなければなりません。
そのような場所がもしある場合は、事前に把握しておく必要があります。
(僕が借りている田はそんな田ばかりです。。)
なんとか代掻きができた場合でも田植え機はそこを通過することができない場合も多々あります。
そのため、代掻きの時点で「どこがどれくらい深いか」をしっかり把握しておくことがポイントになります。
もちろん、そんな深い場所を改善する策もあります。
(が、水が湧くような場所は改善は乏しい場合も。。)
参考:田んぼの暗渠工事
まとめ
田植えはいよいよ苗が田んぼに舞台をうつし、景色も一変する大きなイベントです。
みなさんも田んぼやお米作りといえばまず「田植え」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、僕の場合、薬を使わない方法をしているため、田植えの全作業における割合はたった5%程度でした。
詳しい内容は「お米作り88の工程」を参照してみてください。
田植えに興味がある方はぜひ一度、体験をしてみてくださいね。
少しでも体験することで、普段食べているお米の捉え方が変わるかもしれません。
お米が毎年育ち、生き物がたくさんいて、水の循環を感じることができる「田んぼ」でぜひ一緒に楽しみましょー!